ビジネスコラム

Business column

機械式駐車場は本当に「金食い虫」?改修・リニューアルで資産価値を高める判断基準と進め方

機械式駐車場は本当に「金食い虫」?改修・リニューアルで資産価値を高める判断基準と進め方

「機械式駐車場は金食い虫」といわれることがあります。しかし、その原因は機械式駐車場そのものではなく、老朽化による故障の増加や修繕費の負担、車種変化による空き区画の増加などにあります。
適切なタイミングで改修・リニューアルを行えば、稼働率の改善や資産価値の向上につなげることは十分に可能です。建物の寿命を60〜70年とするなら、その折り返しとなる30年前後は、設備を「維持するためのコスト」から「資産価値を高めるための投資」へ転換する重要な節目でもあります。

本記事では、改修とリニューアルの違い、具体的な設備更新内容と得られる効果、そして改修・リニューアルの判断基準と進め方について解説します。また、記事内では、各種更新事例の効果やリニューアルの必要性をわかりやすくまとめた動画も紹介しています。ぜひ最後までご覧ください。

機械式駐車場の「改修」「リニューアル」の違いとは

機械式駐車場に関わる設備更新には「改修」と「リニューアル」の2つがあります。言葉は似ていますが、その目的・規模・効果は大きく異なります。施設の状況や将来計画に応じて適切な手法を選ぶことが、費用対効果の高い設備更新につながります。

「改修」:機能・性能を部分的に向上させるアップグレード

改修とは、設備全体を入れ替えるのではなく、必要な箇所に絞って機能・性能を向上させる手法です。たとえば、車室の高さ制限を緩和する棚ピッチの変更、EV充電設備の追加、パレット・ターンテーブルや出入口扉の交換などが代表例として挙げられます。設備全体を交換するわけではないため、コストを抑えながら段階的に課題を解消できる点が強みです。
予算が限られる場合や、全面リニューアルの前段として部分的に対応したい場合に適した選択肢といえます。

「リニューアル」:設備全体を刷新する戦略的な設備更新

リニューアルとは、外壁・屋根等の躯体はそのままに、機械設備部分をまるごと入れ替える大規模な更新を指します。設備を一新することで、安全性・収益性・利用ニーズを同時に引き上げることができ、老朽化に起因する課題を根本から解決できる点が最大の強みです。装置部分の更新は建築確認申請が不要なため、手続き上の障壁も低くなっています。

リニューアルの具体的な内容は、動画でご確認いただくとよりイメージしやすくなります。
▶ タワーパーキングリニューアルの必要性

20年以上経過した機械式駐車場が直面する3つの課題

バブル期に建設されたビルやマンションの機械式駐車装置が、今まさに経年劣化による修繕時期を迎えています。老朽化した設備は安全性・収益性・利用ニーズの3つの面で課題を抱えており、放置すると負のサイクルが深まる一方です。現在多くの施設で起きている課題を3つ整理します。

➀ 大型車・ハイルーフ車が入らない車室仕様

1990年代以前に設計された機械式駐車場の多くは、当時主流だったセダンのサイズ基準をもとに設計されています。しかし現在では、ミニバンやSUVなど背の高い車が市場の主流となり、全高1,550mm前後のノーマルルーフを想定した従来の設備では、全高1,700mmを超えるハイルーフ車が入庫できないケースが急増しています。
駐車場に空きがあるにもかかわらず入庫できない車両が続出し、空き区画の増加と収益低下を招いています。近隣の平面駐車場を別途借りるなど非効率な運用を余儀なくされる施設も少なくありません。

➁ 修繕費の増加による維持負担の拡大

経年劣化とともに故障頻度は増加し、都度の修繕費も膨らんでいきます。マンションの管理組合では、駐車場の使用料収入で修繕費を賄うことが難しくなるケースも見られ、維持費が大きな負担となりがちです。こうした状況が続くと修繕対応が追いつかなくなり、メーカーによる補修用部品の保有期間が終了しているケースもあることから、使用停止区画の拡大や装置の全停止という最悪の事態にもなりかねません。

➂ 電気自動車(EV)への対応不足

EVの普及によりモビリティ環境は大きく変化していますが、既存の機械式駐車場では、EV充電設備への対応が十分に進んでいないケースが多く見られます。政府のEV普及促進施策が進む中、充電設備の有無は利用者が施設を選ぶ際の判断材料となりつつあり、対応が遅れた施設は競争上の不利を抱えるリスクがあります。
機種によって対応可否がありますが、EV対応は、単なる利便性の向上にとどまらず、将来的な競争力を維持するための重要課題といえます。

機械式駐車場の改修・リニューアルで得られる4つの効果

こちらの4つの設備更新は、改修・リニューアルのいずれの手法でも対応可能です。設備の状態や課題の範囲によって、部分的な改修で解決できる場合もあれば、全面リニューアルによってより大きな効果が得られる場合もあります。

設備更新の内容 期待できる効果
① 車室サイズ・収容条件の見直し 稼働率改善・収益性向上
② 耐食性部材への更新 維持管理負担の軽減
➂ 制御設備・安全装置の更新 安全性向上・トラブルリスク低減
④ EV対応設備の導入 利用者満足度向上・競争力強化

➀ 車室サイズ・収容条件の見直し(大型車・ハイルーフ車対応)

改修・リニューアルによって、これまで収容できなかった車種への対応が可能になります。

エレベータパーキングでは、棚ピッチを変更することでミニバンやハイルーフ車が収容可能となり、利用できる車種が広がります。タワーパーキングのリニューアルでは、装置をまるごと入れ替えるため、車高・重量の両面で対応範囲を拡大できます。

車高について、機種によって対応可否はありますが、1,550mmから2,050mmまでの車室を組み合わせることができ、ノーマルルーフ車からハイルーフ車まで施設のニーズに応じて構成を変更できます。機種によって対応可否がありますが、例えば、重量は2,500kgに拡大され、従来は収容が難しかったSUVやワイドボディ車などの大型車にも対応可能となります。

収容できる車種が増えることで空き区画が減少し、稼働率と収益性の改善が期待できます。なお、ハイルーフ車対応へのリニューアルは総収容台数が減少しますが、稼働率が高まることで長期的な収益の安定化につながります。

ハイルーフ車対応の事例を含む具体的な内容は、動画でもご確認いただけます。
▶ タワーパーキングリニューアル事例

➁ 耐食性部材への更新(長寿命化・維持負担軽減)

耐食性の高い部材へ更新することで、設備の長寿命化と修繕負担の軽減につながります。
メッキパレット・メッキターンテーブルへの交換は、耐食性向上に優れた選択肢です。さびがほとんど発生しないため、将来にわたるメンテナンスコストの削減が見込めます。

修繕費の削減は、マンションの管理組合にとって大きな負担となりがちな維持費を抑えることにもつながります。長期的な視点で設備の維持コストを最適化できる点は、安定した施設管理を実現するうえで重要なメリットです。

➂ 制御設備・安全装置の更新(操作性・安全性向上)

制御設備や安全装置を更新することで、操作性の向上や安全性の強化につながります。
駐車場法施行規則の改正により、非常停止ボタンやフェンスの設置など、新たな安全基準への適合も求められるようになっています。老朽化した制御装置や安全装置を最新のものに更新することで、トラブルリスクを低減し、利用者が安心して利用できる環境づくりにつながります。

安全基準に適合した設備環境を整えることは、利用者の信頼向上という面でも施設管理における重要な視点のひとつです。

④ EV対応設備の導入(EV普及・利用環境変化への対応)

EV充電設備を導入することで、駐車中のEVを充電できる環境を整えることが可能になります。
エレベータパーキングでは、パレット上にコンセントを設置し、入庫時に充電ケーブルを差し込むだけで、パレットが棚に格納されると自動的に充電が開始します。操作がシンプルで利用者の負担が少なく、好評を得ています。

充電専用電源の設置は必要となりますが、この改修はエレベータパーキングへの対応として可能(一部機種除く)であり、EV普及が進む中での有効な選択肢です。
EV対応設備の導入は、入居者・利用者の利便性向上に直結するとともに、施設選びの判断材料としてEV充電設備を重視する傾向が強まっている中で、物件の競争力強化にもつながります。

改修・リニューアルの判断タイミングと進め方

いつ改修・リニューアルを検討すべきか。また、部分改修と全面リニューアルのどちらを選ぶべきか。その判断の考え方と検討の進め方を整理します。

改修・リニューアルを検討すべき6つのサイン

以下の状況が見られたら、改修・リニューアルの検討を始めるタイミングといえます。

  1. 設置から20〜30年以上が経過している(大型機は30年目、二・多段式は20〜25年目が入れ替え推奨の目安)
  2. 故障の頻度が増加し、修繕費が年々増加している
  3. 空き区画が増加し、稼働率・使用料収入が低下している
  4. ハイルーフ車・ミニバンなど大型車の入庫申し込みを断るケースが増えている
  5. 補修用部品の供給が終了・停止されている
  6. EV充電設備への問い合わせが増えているものの、対応できていない状況

部分改修と全面リニューアルを判断する考え方

改修・リニューアルを検討する際は、設備の状態や運用上の課題を整理したうえで、部分改修で対応できるのか、全面リニューアルが必要なのかを見極めることが重要です。
例えば、EV充電設備の追加や一部部材の交換、安全設備の強化など、課題が限定的な場合は部分改修で対応できるケースがあります。一方で、設備の老朽化が進んでいる場合や、ハイルーフ車対応・収容条件の見直しなど複数の課題を抱えている場合は、全面リニューアルの方が長期的な費用対効果に優れることもあります。
そのため、現在の設備状況だけでなく、今後の利用ニーズや運用方針も踏まえながら、最適な更新方法を検討することが求められます。

改修・リニューアルを成功させるための検討ポイント

まず現状の利用状況(車種構成・稼働率・空き区画数)を把握し、解決すべき課題の優先順位を明確にすることが出発点となります。EVシフトの進行や大型車・ハイルーフ車比率の変化など、将来の車両動向も踏まえた中長期的な視点で設計を選ぶことが重要です。

建築確認申請の要否(装置部分の更新は原則不要)や附置義務台数の確認なども事前に整理しておきたいところです。費用面では設備更新コストと長期的な保守費削減効果を試算し、投資対効果の観点から総合的に判断することが欠かせません。

まとめ|機械式駐車場の改修・リニューアルは資産価値を維持・向上する選択肢

機械式駐車場の改修・リニューアルは、単なる設備の「修理」ではなく、将来の利用ニーズや資産価値を見据えた戦略的な投資です。老朽化を放置すれば、修繕費の増加・稼働率の低下・維持負担の拡大が進み、施設の価値を損ないかねません。
一方、適切なタイミングで設備を更新することで、稼働率の改善・維持コストの最適化・資産価値の向上を同時に図ることができます。

設備更新の詳細や具体的な更新内容については、「パーキング メンテナンス総合パンフレット」もあわせてご参照いただけます。
現在の設備状況や運用上の課題についても、お気軽にご相談ください。改修・リニューアルの検討から計画立案まで、丁寧にサポートいたします。

※「パーキング メンテナンス総合パンフレット」の記載内容は2021年6月現在のものです。

お問い合わせはこちら

おすすめのコラム

Recommend

Pagetop